プラモデルと言うとガンダムのプラモデル、いわゆる「ガンプラ」を想像する⼈が多いかもしれません。ひとくちにプラモデルといってもさまざまなジャンルがあります。なかでも、お城が好きな⽅に向けた商品が「城プラモデル」です。
自分の好きな城や遠⽅にあって訪れるのが難しい城のプラモデルを作れば、完成品がオブジェとして映えるだけでなく、作りながら城の細部にまで詳しくなれます。実際に足を運んだ際の感動も増すことでしょう。
この記事では城のプラモデルを作ってみたい初心者の方に向けて、基本的な知識を紹介します。
目次
城プラモデルの特徴
数あるプラモデルのジャンルの中でも、歴史的建造物の模型である城プラモデルは、ジオラマ(diorama)であり、同時にスケールモデル、キャラクターモデルとしての面もあわせ持っています。
ジオラマとは対象物を風景と合わせて作成した模型のことで、スケールモデルとは対象物を縮尺に応じて正確に再現した模型、キャラクターモデルとは存在しない対象の模型のことです。
日本プラモデル界の代表とも言えるガンプラの場合、1/144などのスケール(縮尺)が表示されていますが、戦車や飛行機のような実物が存在しないためスケールモデルではなく、キャラクターモデルの一種です。
ちなみにバンダイ社の公式ホームページにおいてはガンプラとキャラクターモデルが別々に紹介されていますが、これはガンダム単体が影響力のある巨大ジャンルに成長したことと無関係ではないでしょう。
実物が存在するスケールモデルとは違い、キャラクターモデルの場合は設定が変更されたり、制作者の解釈に違いが見られたりするので、細部の表現が流動的なのが特徴です。
その点、実物が現存する城プラモデルの場合、忠実に現物を写し取っているため解釈で争う余地はないと言えます。写真を参考にしたり、実際に現地に足を運ぶなどして細部を確認できるからです。
しかし、全ての城プラモデルが現存している城をモチーフにしているのではありません。すでに存在しない城を資料に基づいて再現したキットもあります。例えば、童友社から「江戸城」のプラモデルが発売されていますが、すでに江戸城の大半は焼失したり解体されたりして一部しか残っていないため、資料を基にして天守を再現しています。
また、織田信長が建造したとされる「安土城」のキットもあります。財団法人日本城郭協会により日本の名城100選に選ばれ、歴史的知名度の高い城ですが、設計図のような具体的数値を示す資料が存在しません。
そのため安土城のキットは絵巻物や伝承を元にした歴史考証の結果であり、その解釈によって外観は大きく変わってきます。
このようにすでに存在しない城をモチーフにした場合、アニメや漫画のキャラクターを設定資料に基づいて模型化したケースと、非常に似ている面があると言えるのではないでしょうか。
天守閣と城郭
日本の「城」と聞いた場合、上記の写真のように石垣の上に建築された建造物をイメージする方が多いかもしれません。
上記の写真の建築物はまぎれもなくお城ですが、正確には城の一部である天守、あるいは天守閣と言います。そして天守閣が建造されている敷地全体のことを「城郭」と言います。城郭という単語は、城を中心に防壁を巡らせた都市全体を指すケースもありますが、ここでは天守とそれに付随する小天守やお掘、城壁のこととします。
つまり、城プラモデルの中でも城郭までを再現したものは、天守閣を中心とした風景を再現するジオラマでもあるのです。
城プラモデルの作り⽅
城プラモデルを作る際は、プラモデル用の工具と塗料を用意しましょう。
進歩が著しいガンプラの場合、接着剤不要かつパーツが着色済みでシールも充実しており、カジュアルに作れるモデルが発売されていますが、城プラモデルは伝統的な模型製作の手間がかかります。
接着剤とニッパーだけ用意して、説明書通りにパーツを組み付けるだけなら、プラモデル初心者でも十分作成可能ですが、多くの城プラモデルは、塗装を前提として数色の成形色で構成されているため、説明書通りに組み立てただけではやや寂しく感じられるかもしれません。
そのため、組み上げたら塗装をしましょう。壁と瓦、石垣を筆塗りするだけでも無塗装のキットと比べて各段に見栄えが良くなります。
まずは説明書通りに組み上げてみて、それからパッケージのイラストや実物の資料などを参考に色々と手を加えるのが、城プラモデルの楽しみです。
必要な道具類について
城プラモデルに挑戦する際は、下記の道具があると便利です。
・ニッパー
・デザインナイフ
・カッター台
・やすり・紙やすり
・接着剤
・ピンセット
・パテ
・シンナー
・マスキングテープ
・各種筆
・各種プラモデル用塗料
・調色皿
・スプレー缶(サーフェイサー)
これら全てを揃えないと制作できないという事はありませんが、どれも数百円程度で購入できますし、手元にあると制作の幅が広がります。
こういったツールは城プラモデルに限らず、初期に発売されたガンプラや戦車のようなスケールモデルを作る際にも必要なものです。これだけ揃えてしまえばずっと使えるので、模型作りを始めたい方はぜひ参考にしてみてください。
⼈気の城プラモデル4選
最後に人気の城プラモデルを紹介します。実のところ日本には100城以上ありますが、現存する天守は12城しかありません。老朽化が進んで修繕の費用に困ったり、反乱防止のため、廃城令などで取り壊されたからです。
復興天守といって取り壊された後、天守閣が再建された大阪城や小田原城などを加えればもっと多いですが、ガンプラのように新作が出るジャンルではないため人気は偏ります。
日本の名城プラモデル デラックス版 姫路城
まずは、城プラモデルメーカーとして有名な童友社の日本の名城シリーズから「姫路城」です。日本で最初の世界文化遺産となった城であり人気は高く、複数のキットが発売されています。日本の名城シリーズの姫路城は、小天守や城壁を含む城郭全体が再現されており、ハイクオリティです。
城プラモデルの魅力が詰まった名作キットだと言えるでしょう。
日本の名城プラモデル デラックス版 大阪城
昭和6年に再建された「大阪城」もまた、人気の城です。出張や観光で関西に行った際、足を運ばれた方も多いのではないでしょうか。城郭の一部としてお堀も含まれているのが特徴です。
日本の名城プラモデル デラックス版 安土城
外箱に「本能寺の変で灰燼と化した華麗壮大な幻の名城」という文言が記されているように、知名度に反して全貌がつかめない城です。あくまで再現された姿のキットですが、1/360と大きめサイズでロマン要素が満載です。織田信長が好きな方におすすめです。
日本の名城 ジョイジョイゴールド 鶴ヶ城
「鶴ヶ城」とは、悲運の白虎隊で知られる会津若松城のことです。廃城令で取り壊された後、天守が復興されました。その鶴ヶ城の瓦を金メッキしたキットがこちらです。
童友社のキットには、最も手ごろなジョイジョイコレクション、金メッキを施したジョイジョイコレクションゴールド、スタンダード、デラックスがあります。順にサイズが大きくなり、価格も比例して上がります。
ジョイジョイゴールド鶴ヶ城は、1/800スケールのため高さ10cm足らずと非常にコンパクト。白虎隊に興味がある方におすすめです。
日本の名城プラモデル ジョイジョイゴールドコレクション 鶴ヶ城
まとめ
城プラモデルは、模型クラスタの中でもかなりマニアックな分野です。モチーフの数が限られている点、資料が少ない点、ジオラマの要素が含まれる点、やや難易度が高めな点など、一定以上のクオリティに仕上げるためにはある程度の技術が要求されます。
一方で、単に説明書通り組み立てるだけなら初心者でも作成可能という面もあり、技術の差が出やすいキットでもあります。
城プラモデルは歴史的建造物の再現という意味において、歴史クラスタと接点があり、非常に奥が深い分野です。難易度の高さも大人の趣味にふさわしいジャンルだと言えるでしょう。我こそは城マニア!という方は是非挑戦してみてください。
キットを組み立てながら細部のパーツをチェックすることで、資料を読むのとは別の新鮮な発見があるはずです。