お城の門は単なる出入口じゃなかった!城門の役割や種類について解説

1つのお城に複数設置されている「門」。お城を見学する際に多数の門を見かけることもあると思いますが、それぞれにどのような意味・役割があるか知っていますか?実は出入り口として使われる以外にもさまざまな役割があり、1つ1つにしっかりとした名前があるんです!

というわけで今回は、お城めぐりがより一層楽しくなるような「城門」の知識をたっぷり解説していきます!

城門の役割とは?

お城の門は出入り口としての役割のほかに、大きく分けて3つの役割があります。

1つ目の役割は、門をふさいで敵の侵入を防ぐことです。防御力の高いお城では門を複数設けて場内を仕切り、さらには敵が直進できないような進路にすることで、容易に本丸へたどり着けないように工夫しています。そして最悪の場合には、裏口の城門から脱出することも考えられています。

2つ目の役割は、城主の勢力や格式を誇示することです。高度な建築技術や精緻な装飾が施された門は、見る人に畏敬の念を抱かせたり財力の大きさを誇示したりすることに役立ったでしょう。

3つ目の役割は、日々の執務や生活の利便性を増すためです。例えば、「長屋門」と呼ばれる門は両脇を番所として使えるようになっており、訪問者の身元を調べたりお客様を取り次いだりするのに便利な構造になっています。

門の基本構造

門の種類はさまざまですが、基本的な構造はどれも共通です。

まず正面側にある2本の主柱は「鏡柱(かがみはしら)」と呼ばれ、この柱のてっぺん同士に渡した木材を「冠木(かぶらき)」といいます。この時点でごく簡単な門ができあがりますが、これだけでは不安定で強度に欠けるため、多くの門は「控柱(ひかえはしら)」と呼ばれるもう2本の柱を鏡柱の後ろに立てて、木材で鏡柱と控柱を連結させてその強度を高めています。

ちなみに城門の場合は、この基本構造に内開きの扉と屋根を付けるのが一般的です。また、他の建築物と連結させて防御性をさらに高めているものも少なくありません。

建築様式によって異なる!代表的な城門の種類

城門は、建築様式によってさまざまな種類に分けられます。例えば、設置する屋根の種類や控柱の有無、城壁や長屋などの周囲の建物との連結方法などによって名称が変わります。

具体的にどのような門があるのか、 ここで代表的なものを9つ紹介します。

・櫓門(やぐらもん)
・薬医門(やくいもん)
・高麗門(こうらいもん)
・埋門(うずみもん)
・長屋門(ながやもん)
・唐門(からもん)
・棟門(むなもん)
・冠木門(かぶきもん)
・塀重門(へいじゅうもん)

それぞれ詳しく見ていきましょう。

櫓門(やぐらもん)

基本構造の上に、櫓(やぐら)を載せた門です。この櫓門のなかでも、石垣の一部に門を作って細長い櫓を渡したものは、渡櫓門(わたりやぐらもん)と呼ばれることもあります。

城門のなかで最も防御力が高く、大手門や本丸表門など重要な場所に設置される門として用いられるケースが多いです。具体的には、二条城や大阪城、金沢城の大手門などが櫓門でできており、また、姫路城の菱(ひし)の門は、片側だけが石垣に乗っている変則的な櫓門として知られています。

薬医門(やくいもん)

薬医門(やくいもん)とは、鏡柱と控柱を大きな屋根1つで覆った門です。

見栄えがよいため格式の重んじられる場所でよく見られますが、大きな屋根で死角ができてしまったり、城内から敵を射撃しにくかったりと防御面に欠点があるため、実は城門には不向きとされています。現代では、二条城の鳴子門や旧水戸城の薬医門、宇和島城の上り立ち門などで実物を見ることができるので、興味のある方はぜひ足を運んでみてください。

高麗門(こうらいもん)

薬医門のデメリットを改良したのが、屋根を小さくして城内から遠目が利くようにした高麗門(こうらいもん)です。鏡柱の後ろにある控柱の上にもそれぞれ小さな屋根が載せられており、上空から見ると屋根がコの字をなしているという特徴があります。

城内で敵を迎え撃つのに最適な「枡形虎口(ますがたこぐち)」と呼ばれる構造の一部としても利用されており、二条城の二の丸東大手門や江戸城の外桜田門など多くのお城で見学できます。

埋門(うずみもん)

埋門(うずみもん)は石垣や土塀などの一部をくり抜くようにして造られた門です。目立ちにくく防御性が高いというメリットがある一方で、有事以外のときは使いにくいというデメリットもあったため、太平の世になった江戸時代では、主に裏口や非常口として使われていました。

二条城や高松城、姫路城などで見られますが、一般的な観光コースを回るだけでは気づきにくい場所にあることもめずらしくないため、見学の際に埋門を意識して探してみても面白いかもしれません。

長屋門(ながやもん)

長屋門(ながやもん)は、その名の通り、長屋の一部に設置された門です。門の両脇に小部屋が用意されており、その部屋で門番が待機できるようになっています。

ただ、家臣の住む屋敷の正門を兼ねていることも多く、その他の門に比べると防御性はそこまで高くありません。

唐門(からもん)

構造的には大きな屋根を持った薬医門と似ていますが、柱に唐獅子や松竹梅に鶴を合わせた彫刻や金具が木材にあしらわれるなど、他の門に比べて豪華な意匠になっています。また、弓を横にしたような湾曲のある「唐破風」(からはふ)」の屋根を持ち、瓦をかやぶきに変えて豪華な仕上げになっているのも特徴的です。

唐門(からもん)の主な目的は格式の高いことを示すためであり、例えば二条城の唐門では将軍に会うために訪れた大名、幕臣のみしか通ることを許されなかったとされています。

棟門(むなもん)

棟門(むなもん)は、基本構造から控柱をなくした簡易的な門です。安定性に欠けるため、城門として使われている例は多くありません。姫路城の水ノ一門などに見られるように、石垣や城壁に連結するような形で設置されているケースが多いです。

冠木門(かぶきもん)

冠木門(かぶきもん)は、棟門から屋根を取った非常にシンプルな門です。主に戦国時代に用いられた門であるため、江戸時代以降のお城では見られなくなり、現代では岐阜城の冠木門などの数カ所でしか見られません。

塀重門(へいじゅうもん)

塀重門は鏡柱と扉のみの非常に簡易的な門です。こちらも冠木門と同じく戦国時代に主流だった門なので現存物は少ないですが、二の丸御殿の前庭入り口で見学できます。

一説では、塀重門に冠木を付けなかったのは、旗指物(はたさしもの)を持った騎馬武者が通過しやすいようにしたためといわれています。

役割によっても名称が変わる!大手門と搦手門とは?

門の名称は細かく分けると実にさまざまなものがありますが、主要な門を大別すると「大手門(おおてもん)」と「搦手門(からめてもん)」になります。

では、どのような基準でこれらの呼び方が決まっているのでしょうか。

それぞれ確認していきましょう。

大手門(おおてもん)

大手門(おおてもん)とは城の主要な面に向けて設置される門です。城の正面に1つ設けられることもありますが、二条城の東大手門、北大手門のように複数の場所に設置されている場合もあります。いずれにしても大手門は主要な出入口になるため、堅固で防御力が高く、格式が高いのが特徴です。

なお、主要な側を意味する「大手」は、かつては「追手」と書いていたため、「追手門」あるいは「追手町」という名称が全国に残っています。

搦手門(からめてもん)

搦手門(からめてもん)は大手門の対として設けられた裏口の門です。大手門と同様に1つとは限らず、複数配置されていることも少なくありません。

ちなみに、搦手門という名称は、いざ戦になった際に、裏口から兵を密かに出陣させて回り込み、大手門前の敵兵を「搦め捕る」ための門であることに由来しているといわれています。とはいえ、江戸時代以降のように平和な世の中では、もっぱら不浄な物を出すための通路や、何かあったときの非常口として活用していました。このため大手門と比べて小さく質素であるのが一般的です。しかし、中には金沢城の石川門のように立派な搦手門も存在します。

補足:虎口(こぐち)とは?

虎口(こぐち)とは、お城の出入口のことを指します。敵の侵入を防ぐためのさまざまな工夫が凝らされており、基本的には多くの敵に一気に攻め込まれないよう狭く小さくなっています。これを踏まえると、本来の意味では「小口」と表すのが適当なのでしょうが、一説では敵を撃退する場という意味で「虎」という漢字をあてがったといわれています。

門を知ればお城と歴史にますます興味が湧いてくる!

城門の役割や種類を知ると、お城の見学が今まで以上に楽しくなり、その当時の歴史についてさらに関心が湧いてきます。

お伝えしてきたように、城門には「櫓門」や「高麗門」など多くの種類がありますが、それぞれの特徴を知っておけば、誰でも簡単に見極められるようになるので、お城見学に訪れた際は、ぜひ門にも注目してみてくださいね。