石垣がすごい城はここ! 石垣の構造や積み方についてもあわせて教えます!

石垣は、天守や櫓と同じく、お城(城郭)内に含まれる重要な防衛設備のひとつです。現代においては城巡りでぜひ、チェックしておきたいポイントでもあります。

石垣はお城によって個性があり、見比べることでそれぞれのお城が持つバックグラウンドの違いを体感できます。天守に負けずとも劣らないその壮大な構えと奥深さから、虜になるお城ファンも少なくありません。

今回は、そんな魅力的な石垣について紹介した後に、石垣がすごいお城を紹介します。

お城の石垣とは

まずは石垣について解説していきます。石垣の「機能」「歴史」「構造」の3つを取り上げます。

機能

石垣は主にお城の「防御拠点」と「基礎」の2つの役割を果たしています。

防御拠点としては、敵が攻め入った際に簡単に侵入させずに、こちらからの攻撃が効率的に届くような造りに仕上げられています。そのため、石垣は真っ直ぐになっておらず、曲がっていたり出っ張りがあったりします。

そして基礎としては、石垣は上からの力を分散させる構造に造られています。そのため、より強固で安定感のあるお城を実現するために石垣は欠かせません。また、地盤が弱い場所、特に山城などでは崩落の危険性も高いため、土留めとして石垣が使われることもあります。

なお、江戸時代になり、太平の世に移ると石垣は城主の権威を示すものとして扱われるようになりました。城の出入り口には「鏡石(かがみいし)」と呼ばれる大きな石が多く使われることになり、見せる石垣へと変貌していきます。

歴史

お城に石垣が本格的に採用された時期には諸説ありますが、多くの場合、織田信長の居城「安土城」が始まりとされています。安土城は、日本で初めて総石垣で造られたとされる城です。もちろん、安土城が築城される前にも石垣は使用されていましたが、そこまで本格的なものではありませんでした。ちなみに、それまでのお城の多くは土を用いた「土塁」で造られていました。

なお、安土城の石垣は穴太衆(あのうしゅう)と呼ばれる石工の専門家によって造られました。

構造

石垣の一番下には「根石(ねいし)」と呼ばれる石があり、これが石垣の基礎です。この根石の上から石を積み上げていって石垣が完成します。ちなみに根石は地面の下にあるので通常は見ることができません。

地盤が弱い場合は根石の下に「胴木(どうぎ)」と呼ばれる木を使用することもあります。この場合は地面に杭を打って固定します。石垣の裏には裏込め石(栗石)があり、石垣の安定性を高めます。小さな石が使用されていますが、ここの工程が不十分だと、石垣全体が崩れてしまいます。

基本的に石垣は異なる大きさの石を使用しているため、工程の手間はかかりますが、その分強度が高くなります。上から強い力がかかっても、大きさが不規則な石が並んでいるため、力が分散されるからです。

石垣は絶妙なバランスで造られているので、石垣を見学する際は、小さい石であっても目を凝らして見てみてください。

石垣の加工方法は3種類

石垣の加工方法は、野面積み(のづらづみ)・打込接ぎ(うちこみはぎ)・切込接ぎ(きりこみはぎ)の3種類があります。それぞれ解説していきます。

野面積み

石垣が登場した頃に使用されていた加工方法です。先ほど解説をした穴太集が得意としていたことから、穴太積みとも呼ばれています。

ほとんど加工せずに石を積み上げていくので、石の間には隙間や出っ張りが生まれてしまいます。ただし、隙間があるため水捌けはいいです。

ちなみに、野面積みは鎌倉時代末期に編み出された方法と言われています。

打込接ぎ

石を打ち砕いて加工し、石の隙間を無くしていく加工方法です。安土城以降から江戸時代までに造られた近世城郭で採用されました。石を平らにしてはめ込むような形もあります。まだ隙間や出っ張りがありますが、野面積みと比べると最小限に抑えられています。

この加工方法により、石垣の強度が増すようになったため、高く急な勾配にも耐えられるようになりました。

切込接ぎ

隙間がなくなるように角を削り大きさを四角に加工をする方法です。切込接ぎが江戸時代に編み出されたことにより、より高さがある石垣造りが可能になりました。石の隙間がないため、別で排水口を設けています。

隙間がなく石がぴったりとはまっている石垣はとても美しいです。

野面積み・打込接ぎ・切込接ぎは進化の順番になっている

それぞれ解説したように、野面積み・打込接ぎ・切込接ぎは進化の順番です。最初は自然の石をそのまま積み上げていただけでしたが、加工技術が発達したことによって、隙間がない石垣を造ることが可能になりました。石垣造りは野面積みから始まり、切込接ぎで完成したということになるでしょう。

石垣の積み方は5種類+1種類

石垣の積み方には、布積み(ぬのづみ)・乱積み(らんづみ)・玉石積み(たまいしづみ)・谷積み(たにづみ)・⻲甲積み(きっこうづみ)の5種類があります。さらに角に使われる算木積(さんきづみ)というのもあるので、こちらもあわせて解説してきます。

布積み

石の繋ぎ目が横に通るように積み上げる方法です。綺麗に揃っているので、石垣が綺麗に見えます。別名「整層積み」とも呼ばれています。

乱積み

石を不規則に積み上げていく方法です。石を上手く組み合わせる必要があるため、高い技術が必要とされています。

玉石積み

その名の通り丸い石を積み上げる方法です。一般的に石垣では、強度と見た目の美しさを兼ね備えていることから「花崗岩(かこうがん)」が使用されていますが、丸い石はこれが手に入らない場合に使われることが多いです。

谷積み

石を斜めに積み上げる方法です。石の角を綺麗に収めることが大切です。江戸時代後期に編み出された比較的新しい方法で、お城以外にも堤防などで使用されています。

⻲甲積み

亀の甲羅のように石を六角形に加工して積み上げる方法です。積み上げにくい石の形状のため、主に低い石垣で採用されていました。均等に力が分散されるので、崩れにくくなります。

算木積

石垣全体ではなく、石垣の角の積み方です。石の長辺と短辺が交互に重ね合わさるように積まれており、長辺は短辺の2、3倍の大きさに加工されています。長辺と短辺の石を交互に組み合わせ、さらに短辺の隣には角脇石(すみわきいし)と呼ばれる短辺の1、2倍の石を上手くはめ込むことで、石垣の角が隙間なくがっちりとしたものになります。これにより、石垣の角と周りの石をしっかりと固めることができ、強度が何倍にも増します。

一見の価値あり! 石垣がすごい城5選

ここからは日本のお城の中から、石垣が特徴的なお城を紹介します。なお、築城当初のものと江戸時代以降にリニューアルされたものが残っている場合があります。そういった違いも含めてお城を楽しんでみてください。

大坂城

大阪城

石垣の高さは最大で30メートルを超え、これは日本一の高さを誇ります。お城は総延長12キロの石垣で囲まれており、使用された石は100万個を超えるとされています。

たこの形をした「蛸石(たこいし)」と呼ばれる石や、石垣の上に「石狭間」と呼ばれる鉄砲撃つための場所があるなど、見どころが多くあります。

なお、現在の大坂城の石垣は江戸時代に徳川家康の指示で造られたもので、豊臣秀吉が造ったものではありません。しかし豊臣秀吉の時代に造られた石垣も残っており、発掘や公開も行われています。

江戸城

江戸城

江戸城には土塁と石垣が組み合わさった言わばハイブリッドな城壁が存在します。形としては土塁の上に石垣があるというもので、これは土塁を石垣で補強することで、櫓などの重い建造物を城壁の上に設置しやすくするためです。また、江戸城の城壁は水に面しているため、土塁部分を石垣で補強することで、強度を増しています。

江戸城の石垣は様々な産地の石を使用しており、色や形にこだわっていたことがわかります。さすがは将軍の居城というところでしょう。その中でおすすめなのは中之門跡にある石垣です。江戸城で最大級の巨石が使用されており、瀬戸内から運ばれてきたものです。瀬戸内産の石は白くて美しいものです。

なお、江戸城の外堀の門に使用されていた石垣の一部は、赤坂見附や四谷見附など街中に残っています。

熊本城

熊本城

「二様の石垣」と呼ばれる反り返った石垣が特徴です。敵を返り討ちにするため、上にいくにつれて傾斜が急で登りにくくなっています。

2016年に起きた熊本地震では、熊本城内の飯田丸五階櫓(いいだまるごかいやぐら)が倒壊の危機に陥りましたが、ギリギリのところで耐え抜き「奇跡の一本石垣」と称されました。

丸亀城

丸亀城

「石垣の名城」と称されており、「扇の勾配」と呼ばれる石垣の曲線美が特徴です。

丸亀城は4段の石垣で構築されており、総高60メートル以上になります。一番高い所で20メートルを超えます。まさに圧巻の一言につきます。

丸亀城に現存する石垣のほとんどは江戸時代初期に造られており、ここまで本記事を読まれた方はお気づきかと思いますが、切込接ぎで加工されています。しかし、場所によっては野面積みや打込接ぎで加工された石垣も残っているので、違いを楽しむことができます。

首里城

交易があった中国の影響を受け、通常のお城とは異なる作りになったとされるのが首里城です。そのため、基礎の上に石の手すり(石高欄)が設けられているなど、他のお城では見ることができない石垣があります。

また首里城の石垣は曲線を描いているものが多く、防衛設備としての機能性はもとより、美しさも目を見張るものがあります。

石垣からお城のストーリーが紐解ける

「石垣」と一言で表しても、様々な加工方法や積み方があり、お城の立地や時代によって最善の方法を選んでいます。また、お城がどんな役割を果たしていたかによっても、石垣の姿形は変わっていきます。

つまり、石垣はお城それぞれのストーリーと濃く結びついているのです。石垣を知ることはその城を知ることにつながり、石垣にまで目を向けることで、当時の息吹をより感じられるようになるでしょう。